1990年代中盤の「ピピッ、ピピッ」という単音呼び出し音から、2000年代中盤の「着うたフル」に至るまで、モバイル着信音の進化は日本のモバイルカルチャーそのものであった。
当時、最も多くの人々の鼓膜に刻まれたのがドコモガラケー着信音の数々だ。NECの「Nシリーズ」に搭載されていた『春』や『メヌエット』、パナソニック「Pシリーズ」特有の澄んだベル音、富士通「F」のシックな電子アラームなど、端末を開くだけで誰の携帯が鳴ったかが判別できるほどメーカーごとの個性が際立っていた。DDIポケット(後のウィルコム)やアステルが普及させたPHS端末から流れる、超高域のガラケーピッチ音mp3もまた、通話品質の高さを象徴する澄み切ったシグナルとして今なお根強い支持を誇る。
対するau(旧IDO・DDIセルラー)陣営も負けてはいない。デザインケータイの先駆けとなった「INFOBAR」をはじめ、カシオのG'zOneシリーズやソニー・エリクソンの着メロ端末は、音響専用チップ(ヤマハ製SMAF音源チップ等)を搭載して3和音から16和音、さらには40和音、64和音へと表現力を飛躍させた。クラシックの名曲やポップスをFM音源で緻密に打ち込んだ当時の着メロは、単なる着信通知を超えた「パーソナルな表現ツール」として若者カルチャーの真ん中に君臨していたのである。