鶏肉を選ぶ際、ヘルシーで安価な「むね肉」にするか、ジューシーでコクのある「もも肉」にするかで、下ごしらえの工程は根本から分かれます。
まず、高タンパク・低脂質で人気の高い鶏むね肉ですが、「火を通すとパサついて硬くなる」という悩みがつきまといます。ナスと鶏むね肉がパサつかない理由を食品化学の観点から紐解くと、加熱温度が65度を超えた瞬間に筋繊維が収縮し、肉汁が外部へ絞り出されてしまう点にあります。これを完全に防ぐプロの技術が「砂糖と酒、そして片栗粉のトリプルバリア」です。鶏むね肉の繊維を断ち切るようにそぎ切りにし、重量の約1%の砂糖と酒を揉み込むことで保水性を向上させ、最後に片栗粉で表面を薄くコーティングします。これにより、フライパンの高熱に晒されても水分が逃げず、しっとりとした柔らかな食感をキープできます。
一方、食べ応えを重視するファミリー層に圧倒的な支持を集めるのがナスと鶏もも肉のこってりみそ炒めです。鶏もも肉は皮目に豊富な脂(皮下脂肪)を含んでおり、この鶏油(チーユ)こそが最高の天然調味料になります。調理の鉄則は、まず鶏もも肉の皮目を下にして油を引かずに中火でじっくり焼き、皮から染み出た旨味たっぷりの脂を使って、乱切りにしたナスを炒めることです。「味噌2:みりん2:酒1:醤油0.5:砂糖0.5」で練り合わせた特製味噌ダレを最後に絡めれば、鶏の動物性油脂と味噌の発酵アミノ酸がナスの中で完璧に融合し、白米が止まらない濃厚なおかずが完成します。