近年、高級寿司店において「撮影に夢中になるあまり、置かれた寿司を数分間も放置してシャッターを切り続ける客」に対する店側の苦渋の決断が相次いでいます。一部の有名店では「写真撮影全面禁止」や「手元の料理のみ1枚、30秒以内で」といったローカルルールを明文化する動きが広がっています。
寿司職人が握りを提供する瞬間は、シャリの温度、空気の含有量、ネタとシャリの馴染み具合が極限に達した「味の頂点」です。取材に応じた銀座の寿司職人は、「お客様が写真を撮り終えるのを待つ数分間に、ネタの水分は抜け、シャリの温度は下がり、海苔は湿気てしまう。それはもう、私たちが提供したかった寿司ではありません」と悔しさを滲ませます。
真の「美味しい寿司写真」とは、店側の情熱と職人技に対するリスペクトがあって初めて成立します。席に着く前にカメラアプリの露出やズーム設定を済ませておき、板場から出された瞬間に静かに1〜2枚だけ撮り、すぐさま口に運ぶ。この所作のスマートさこそが、結果として最もネタが瑞々しく輝いた「奇跡の一枚」を残すための絶対条件なのです。