石川由依のキャリアを語る上で欠かせないのが、作品の世界観そのものを決定づける重厚な代表作の数々です。彼女の演じるキャラクターは、単なる記号的なアニメ声ではなく、肉体を持った人間としての生々しい息遣いを感じさせます。
その筆頭が、世界的な社会現象となった『進撃の巨人』のミカサ・アッカーマンです。過酷な世界を生き抜く冷徹な戦闘力と、エレンに対する狂おしいほどの情愛という二面性を、極限まで抑制された声色で見事に体現しました。当時の制作発表やインタビューにおいて、感情の波をあえて表に出しすぎず、腹の底に秘めるようなディレクションに真摯に向き合ったことが明かされています。
そして彼女の評価を不動のものにしたのが、京都アニメーションが手掛けた『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』のヴァイオレット・エヴァーガーデンです。「愛してる」の意味を知らない自動手記人形が、他者の心に触れることで感情を獲得していく過程を、微細な声の揺らぎや息づかいで表現。第15回声優アワード主演女優賞の獲得へと繋がる決定的な演技となりました。
ゲームの世界でもその存在感は圧倒的です。『NieR:Automata』の2Bでは、感情を持つことを禁じられたアンドロイドの規律正しさと、任務の裏に滲む痛切な葛藤を好演。さらに『アズールレーン』のエンタープライズでは、戦場を統べる誇り高きエース空母としての凛々しさを響かせ、国内外のプレイヤーを魅了し続けています。