47都道府県の境界線はすべて明確に引かれていると思われがちですが、実は日本国内には現在でも境界線が法的に画定していないエリアが複数存在します。国土地理院が発行する公式地図を見ても、該当箇所には県境の破線が引かれておらず、空白や「境界未定」の注記がなされています。
代表的な事例が、静岡県と山梨県にまたがる富士山頂上付近(8合目より上)です。富士山頂は古くから信仰の対象であり、歴史的に富士山本宮浅間大社の境内地(私有地)として認められている経緯があります。両県の間で山頂の所属を巡る協議が重ねられてきたものの、観光資源や象徴性としての重要性から双方が譲らず、現在も県境は未画定のままです。
また、島根県と鳥取県の間にある「中海(なかうみ)」の水面や、山形県と宮城県の県境に位置する「蔵王連峰」の尾根筋の一部でも、歴史的な入会権(入会地利用の権利)や漁業権を巡る対立から境界が確定していません。
境界線が未定のままで行政上の支障が出ないのかという疑問が生じますが、地方自治法に基づき、国から配分される地方交付税交付金の算定においては「関係自治体間で協議した按分比率」あるいは「未定地を除外した面積」を基に計算される仕組みが整っています。かつて十和田湖を巡って青森県と秋田県が激しく対立した際も、2008年に湖面の面積を「青森県6:秋田県4」で按分合意するまで、100年以上にわたり境界未定のまま共存していました。地図上の県境には、地域の利害と歴史が凝縮されています。