対人関係において相手が視線を切る瞬間、脳内では急速な感情処理が行われています。一般社団法人日本心理行動学会などの研究報告によれば、人間が他者と視線を交わした際に維持できる限界時間は平均して約3.3秒とされています。これを超えるアイコンタクトは脳幹に強い覚醒シグナルを送り、交感神経を刺激するため、本能的に視線を外す生理現象が引き起こされます。問題は、その視線外しが「好意」なのか「拒絶」なのかという点です。
好きな人が目をそらす心理の根底には、いわゆる「好き避け」と呼ばれる無意識の防衛機制が働いています。好意を抱く相手を視界に捉えると、脳内ではドーパミンとオキシトシンが分泌されると同時に、心拍数が急上昇します。「好意が相手に露呈してしまう恐怖」や「自意識過剰による強い羞恥心」から、恥ずかしくて目をそらすという行動が自動発動する仕組みです。この場合、目をそらした直後に髪を触る、小刻みに視線を戻す(チラ見する)、体の前面やつま先は相手の方を向いているといった特徴的な仕草が現れます。
一方で、警戒や拒絶を意味する目をそらす脈なしのパターンは極めて冷淡です。視線をそらすと同時に身体全体の向きを斜め後ろへ引く、腕組みをしてパーソナルスペースを遮断する、あるいは表情筋を一切動かさずにスマートフォンへ視線を落とすといった行動が確認されます。好意による回避が「動揺」を伴うのに対し、拒絶による回避は「無関心・遮断」のシグナルを伴う点が決定的な判別基準です。