1973年のトイレットペーパー騒動は、半世紀近い時を経た2026年の新型コロナウイルス感染拡大初期において、ほぼ同一の構図で再演されました。「マスクと同じ原料を使っているためトイレットペーパーが中国から入らなくなる」というSNS上の明確なデマが拡散し、全国のドラッグストアで品切れが発生した出来事です。
両者の構造を比較すると、驚くほど共通した人間心理と流通のメカニズムが浮かび上がります。
- 国内自給率の高さと実態の乖離:日本のトイレットペーパー自給率は約98%であり、古紙再生パルプが主原料のため海外依存度は極めて低い。しかし消費者の不安が事実を覆い隠した。
- かさばる商品の物流ボトルネック:倉庫や配送トラックの容積制約により、突発的な需要増に対して店頭陳列のスピードが追いつかない。
- 「空の棚」が引き起こす同調行動:普段は冷静な人であっても、店舗で空っぽの棚を目撃したり他人がカートに詰め込んでいる姿を見たりすることで、「自分も買わなければ損をする」という防衛本能が働く。
1973年はテレビ・新聞などのマスメディアがパニックを可視化・増幅させ、2026年はSNSの画像投稿がその役割を果たしました。情報伝達のスピードやツールは変化しても、不確実性に直面した際の集団心理のパターンは不変であることを示しています。