多くの学習者が疑問を抱くのが、「水兵(水夫)」という日本語の直後に登場する「リーベ」という耳慣れない響きです。実はこの「リーベ」は、英語のLoveに相当するドイツ語の「Liebe(愛・恋人)」を意味しています。
直訳すると「水兵は愛する、僕の船を……」という、どこか詩的で哀愁漂うストーリー仕立てになっている点が特徴です。では、なぜ日本語の語呂合わせの中に突如としてドイツ語が混入したのでしょうか。その理由は、日本の近代学術史に深く根ざしています。
明治政府が近代化を推進する過程で、日本の医学および化学教育はドイツの学術体系を規範として導入しました。旧制高校や帝国大学の学生・教員の間では、日常会話や学術用語にドイツ語を交えることがエリート層の教養とされていました。当時の旧制高校生が元素記号「Li(リチウム)」と「Be(ベリリウム)」を覚える際、自らの教養言語であったドイツ語の「Liebe」を自然に当てはめたのが発祥とされています。一見すると風変わりな語呂合わせですが、日本の近代科学史の息吹を今に伝える貴重な文化的遺産といえます。