トリプルスリーという専門用語が野球ファンの垣根を越え、一般社会へ爆発的に浸透した最大の契機は2015年である。この年、セ・リーグの山田哲人(ヤクルト)とパ・リーグの柳田悠岐(ソフトバンク)が揃って大記録を打ち立てた。同一年における複数選手の達成は、1950年の岩本義行・別当薫以来、実に65年ぶりの歴史的快挙であった。
スポーツ紙の一面を連日飾り、テレビのワイドショーや特番がこぞって両者のバッティングフォームとスプリントデータを徹底解剖。その熱狂はスポーツ界だけに留まらず、同年の『ユーキャン新語・流行語大賞』において「トリプルスリー」が年間大賞を受賞するという異例の社会現象へ発展した。
当時の取材記録や本人の証言を振り返ると、二人のアプローチの対比が極めて鮮烈である。柳田悠岐は規格外のフルスイングを崩さず、驚異的なスイングスピードで広角に打球を飛ばしながら、打率.363という高打率を残した。柳田本人は当時のヒーローインタビューや手記で「毎打席、自分のスイングを貫いた結果。三振を恐れずに強く振ることが、結果的に打率にも繋がった」と述懐している。
一方、二塁手という守備負担の大きいポジションで偉業を成し遂げた山田哲人は、圧倒的な盗塁技術の高さが際立っていた。2015年シーズンの盗塁成功率は89.5%(34盗塁4失敗)。単に足が速いだけでなく、投手の牽制球の癖やカウント別の投球パターンを緻密に分析した走塁眼が光った。山田哲人のトリプルスリー記録はこれにとどまらず、翌2016年、さらに2018年にも達成。プロ野球史上誰一人として成し得なかった「通算3度のトリプルスリー」という前人未到の境地に到達したのである。