結論から明かすと、鳥山明氏による原作漫画『DRAGON BALL』の全519話、ならびに東映アニメーション制作の『ドラゴンボールZ』の放送回をどれほど精査しても、「ヤムチャしやがって」という台詞は一度も登場しない。ネット上のコミュニティでは長年「クリリンが涙を流しながら呟いた台詞」「天津飯が悔しさを滲ませて放った一言」といった記憶違いが散見されるが、これは後年のネットスラングが原作の記憶を上書きした典型的なマンデラ効果である。
原作におけるサイヤ人編(コミックス18巻/其之二百十五「ヤムチャの真相」)の実際の描写を振り返ると、事態は極めてシリアスに進行している。栽培マンの不意打ちによる自爆を受け、クレーターの中で事切れたヤムチャを発見したクリリンは、言葉を失った後に激怒し、「オレにやらせてくれ…!」と懇願した上で単身敵陣へ拡散エネルギー波を放っている。作中で交わされたのは、仲間の突然の死に対する戦慄と激しい憤りであり、軽妙なニュアンスを含む言葉が入り込む余地は一切なかった。
では、なぜこの架空のセリフがこれほどまでに定着したのか。その発端は、2000年代初頭のテキストサイト全盛期から2ちゃんねる(現5ちゃんねる)の各種掲示板で流行していた定型句「無茶しやがって…」にある。無謀な挑戦をして散っていった者を天を仰ぎながら称えるネットミームと、「ヤムチャ」という人名のリズムが奇跡的な一致を見せたことで、誰からともなく言葉遊びとして改変されたのが直接のルーツである。