浪花屋製菓の歩みを語る上で欠かせないのが、大正12年(1923年)の創業当時における偶然のアクシデントです。創業者の今井與三郎氏が、あられ作りに使っていた薄い小判型の金型をうっかり踏み潰してしまい、変形させてしまったことから物語は始まります。
当時の物資は貴重であり、歪んだ金型をそのまま使って薄く切った餅を焼いたところ、中央がぷっくりと膨らみ、三日月のような独特の湾曲した形状に焼き上がりました。これを見た近隣の尋常小学校の教員や得意先の旦那衆から「これはまるで柿の種のような形だ」と言われたことが、世界中で親しまれる「柿の種」というネーミングの起源です。
新潟の企業でありながら「浪花屋」を屋号に掲げた理由も興味深い史実です。創業者・與三郎氏が、当時あられ・煎餅の本場であった上方(大阪・浪花)の職人から製法を学び、その恩義と商売繁盛への願いを込めて名付けられました。単なる地方の銘菓にとどまらず、伝統の技への敬意を社名に刻み込んだ姿勢は、1世紀を経た現在も同社のアイデンティティとして息づいています。