猫の歌を鑑賞・消費するうえで、多くの人が陥りがちな決定的な盲点が存在します。それは、「猫が喜ぶ音楽」と「人間が猫を思って喜ぶ音楽」の致命的な乖離です。
ネット上では時折、「猫がリラックスする魔法の音楽」「猫を呼び寄せる歌」といった動画が数百万回再生を集めています。しかし、動物行動学や音響心理学の研究機関(米ウィスコンシン大学マディソン校などの研究チーム)が公表したデータによると、猫の聴覚は人間の3倍以上、高周波では6万ヘルツ以上の音を感知します。人間にとって「ポップで心地よい猫の歌」であっても、アコースティックドラムの打撃音や電気信号のノイズ、甲高いボーカルの倍音は、猫にとって強烈なストレス源となり得ることが実証されています。
つまり、私たちが感動している「猫の歌」の99%は、純粋に人間のための精神安定剤であり、猫当事者の福利とは無関係であるという事実を弁える必要があります。この前提を取り違えると、愛猫に大音量で楽曲を聴かせて反応を面白がるという、善意に基づいた無自覚な加害を引き起こしかねません。