ネット上で囁かれる「レジンアレルギーは一度発症したら二度と治らない」という説は、医学的な事実です。レジンアレルギー一度なったら治らない真相の根拠は、獲得免疫系を司る「メモリーT細胞」の長期生存機構にあります。
一度特定のアクリル系モノマーに対して感作が成立すると、その抗原情報を記憶したメモリーT細胞が生体内に半永久的に蓄積されます。数ヶ月、あるいは数年の休止期間を挟んだとしても、同一または類似した化学構造を持つ分子がわずかでも皮膚や粘膜に触れれば、免疫システムは即座に記憶を呼び覚まし、初回よりも迅速かつ強力な炎症攻撃を仕掛けます。体質が自然にリセットされることはありません。
この体質の固定化が最も危険な形で波及するのが、歯科診療の現場です。一般的な虫歯治療で使用されるコンポジットレジン(白い詰め物)、義歯の床用材料、仮歯、インプラントやクラウンの接着セメントには、高濃度のアクリル系モノマー(Bis-GMA、UDMA、TEGDMAなど)が使用されています。
趣味のネイルやレジン工作で感作された患者が歯科治療を受けた結果、歯科レジンアレルギー口腔内症状を引き起こす事例が学会等でも注視されています。主な症状としては、以下のような病態が挙げられます。
- 口内の広範囲にわたる頑固な口内炎や潰瘍
- 舌や頬粘膜のピリピリとした灼熱感・しびれ(舌痛症類似の症状)
- 歯肉の持続的な発赤、腫脹、出血
- 口腔粘膜に網目状の白い病変が生じる「扁平苔癬(へんぺいたいせん)」様病変
- 口角炎や口唇の激しい乾燥・腫れ
レジンに感作された事実を歯科医に告知せずに充填治療を行うと、原因不明の口腔内トラブルに長期間悩まされることになります。一度アレルギーを発症した人間は、将来的な医療リスクを背負い続けることになるという重い現実を直視しなければなりません。