むつみ荘が全国区の知名度を獲得した最大の要因は、TBS系バラエティ番組『水曜日のダウンタウン』による容赦ないロケ企画の数々である。
「春日の部屋に勝手に住み込み企画」「春日の自宅で芸人たちが潜伏」「あかつによるむつみ荘脱出チャレンジ」など、春日の留守中や在宅時を問わず部屋そのものがスタジオセットのように扱われた。玄関ドアの鍵を預かる大家さんの公認のもと、テレビ史に残る過激なドッキリが幾度となく敢行された。
そして2019年、春日の結婚退去が決まった際に実施されたのが、番組発の大型企画「2代目むつみ荘住人決定オーディション」である。春日が愛した201号室を空室にせず、次の若手芸人に受け継がせるという前代未聞の試みだった。
全国から集まった多数の貧乏芸人たちが熾烈な争いを繰り広げ、最終的に春日本人と大家さんの選考によって後継住人が選ばれた。選ばれた芸人は実際に201号室へと引っ越し、春日と同じ風呂なし生活をスタートさせた。
しかし、春日という強烈なオリジネイターが20年かけて築き上げた文脈をそのままトレースすることは容易ではなかった。後継住人は一定期間むつみ荘で暮らし、番組や自身のSNSで生活模様を発信したものの、時代の変化や活動拠点の見直しに伴い、後年に退去を選択している。偉大すぎる前住人の影と、令和の若手芸人が置かれた現実との落差が浮き彫りとなった瞬間でもあった。