清野菜名の表現力の豊かさを語る上で、その異色すぎる経歴は見逃せません。芸能活動のスタートは、ティーン向けファッション誌『ピチレモン』の専属モデルでした。2007年、オーディションでグランプリを獲得した彼女は、愛らしいルックスと明るい笑顔で同世代読者のカリスマ「ピチモ」として一躍人気を博します。しかし、ファッションモデルとしての活動を続けるなかで、彼女の心に芽生えたのは「身体を使ったダイナミックな芝居がしたい」という強い欲求でした。
高校進学とともに上京した彼女は、アクション監督・坂口拓氏のもとで本格的なアクション養成所に入所。ボクシング、立ち回り、アクロバット、中国武術などを1年間にわたって徹底的に叩き込まれます。当時のインタビューや手記において、彼女は「あざだらけになりながら、毎日泣くほど過酷な訓練を重ねた」と告白しています。この下積みが実を結び、園子温監督の映画『TOKYO TRIBE』(2014年)のオーディションで圧倒的な身体能力を見せつけ、ヒロイン・スンミ役に大抜擢されたことで運命が激変しました。
モデル時代の洗練されたポージング感覚と、泥臭い訓練で獲得したアスリート並みの体幹。写真集『セイノナ』に刻まれているのは、まさにこの「ピチレモン時代の可憐さ」から「本物のアクション女優」へと脱皮を遂げる瞬間の奇跡的なクロスポイントです。ただ立っているだけで背筋がピンと伸びた姿勢の美しさは、生半可なトレーニングでは到達できない説得力を醸し出しています。