扇状地を深く理解する上で外せないのが、谷口から下流に向かって3分割される「扇頂(せんちょう)」「扇央(せんおう)」「扇端(せんたん)」という部位ごとの特徴です。扇状地を一括りに「水がない場所」と捉えるのは典型的な誤りであり、場所によって水環境は劇的な変化を見せます。
まず、谷の出口に位置する扇頂は最も傾斜が急で、大人が両手で抱えるような巨石や太い礫が堆積しています。川の浸食力と土砂の供給が激しく、集落が作られることは稀です。そこから放射状に広がる扇央に入ると、川の水が砂礫層の下へと吸い込まれるように沈み込み、地表から川が姿を消す「地下水伏流」が起きます。晴天時には川底が白く干からびた「水なし川(涸れ川)」が現れ、井戸を深く掘らなければ水が得られないため、一面の果樹園や桑畑が広がる景観が生まれます。
ドラマチックな転換が訪れるのが、扇の縁にあたる扇端です。地表の傾斜が平野部と合流して緩やかになると、地下を流れていた伏流水が水圧に押されて再び地表へと吹き出します。この「湧水帯」では清らかな水が豊富に手に入るため、古くから人々が集まり、扇の孤に沿うように民家が並ぶ「列状集落」が形成されました。
国土地理院が発行する2万5千分の1地形図を見れば、この構造は一目瞭然です。谷口を中心として、等高線が綺麗な同心円状のカーブを描きながら適度な間隔で並んでいます。また、扇状地では川底に土砂が溜まり続けることで、周囲の家屋や田畑よりも川底の位置が高くなってしまう天井川が発達しやすい点も、地形図読図テストにおける頻出ポイントです。