現在、ウルルが先住民族アナングの人々の文化的意向によって登頂を完全に禁止しているのに対し、マウント・オーガスタスは正規のトレイルを通じて山頂に立つことが認められています。しかし、観光気分の安易な散策と捉えると、取り返しのつかない危険に直面することになります。
公園を管理する西オーストラリア州生物多様性・保全・名所局(DBCA)の公式警告によると、山頂を目指すサミット・トレイル(Summit Trail)は「クラス4〜5」の最上級難関ルートに指定されています。全長は約12km(往復)、所要時間は成人男性の健脚でも6〜8時間を要します。序盤こそ緩やかな低木林の間を進むものの、中盤以降はゴツゴツとした砂岩の巨礫地帯をよじ登る急登が続き、足元は常に滑りやすい浮き石に覆われています。
実際に現地へ登頂した日本人トラベラーや現地の冒険家たちの記録からは、その生々しい厳しさが伝わってきます。
「朝6時に出発したが、午前9時を過ぎると赤土の照り返しで体感温度は一気に跳ね上がった。遮る木陰は一切なく、持参した3リットルの水は下山途中で底をつきかけた。登頂時の360度見渡す限りの赤褐色と地平線は生涯忘れられない絶景だが、ウルルのような舗装された遊歩道感覚で挑むと確実に遭難する」(現地を踏破した日本人バックパッカーの手記より)
夏場(11月〜3月)には日中の気温が40度以上に達し、熱中症や脱水症状による死亡事故の危険性が極めて高くなります。現地のレスキュー部隊が到着するまでに数時間以上を要する隔絶地域であるため、早朝午前6時前のスタート、1人あたり最低4〜5リットルの飲料水携行、頑丈なハイキングシューズの着用が義務に近いマナーとして課されています。
一方で、登山に挑戦せずとも、麓に点在するフラットな散策路を歩くだけでこの山は豊かな表情を見せてくれます。フリントストーン・ロック(Flintstone Rock)周辺では、数千年前に彫られたワジャリ族のペトログリフ(古代岩絵彫刻)を間近に観察できるほか、夜明けと夕暮れ時には岩肌がピンクから紫、深紅へと刻一刻と変幻する「色彩のシンフォニー」を堪能できます。