本作が朝ドラ史において特筆される理由の一つに、若手男性俳優の卓越したブレイクスルーがあります。特にみね子を巡る恋模様を演じた島谷役の竹内涼真と、ヒデ役の磯村勇斗のキャスティングは、その後の日本映像界に大きな影響を与えました。
大企業グループの御曹司である島谷純一郎(竹内涼真)は、あかね荘の住人としてみね子と出会い、育ちの違いを超えて惹かれ合いました。しかし、実家の経営危機に伴う縁談という家柄の宿命を前に、みね子を傷つけまいと自ら身を引く決断を下します。当時、この切ない別れのシーンは「島谷ロス」と呼ばれる社会現象を巻き起こし、竹内涼真の端正な佇まいと繊細な感情表現は一気に世間の注目を集めました。
一方、すずふり亭の見習いコック・ヒデこと前田秀俊(磯村勇斗)は、みね子の失恋や父親捜しを常に一番近くで静かに見守り続けました。派手さはないものの、誠実かつ確実に腕を磨き、みね子の心情に寄り添い続けたヒデの姿勢は、視聴者から絶大な信頼を獲得。最終的にみね子と結ばれるパートナーとなりました。磯村勇斗は本作後、硬軟自在なカメレオン俳優として日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞するなど、日本を代表する実力派へと確固たる地歩を築いています。