国会議員が親族を公設秘書や私設秘書に起用することに対しては、公費で給与が支払われる点から「税金の身内還流ではないか」という批判が常に付きまといます。それでもなお、高市氏が知嗣氏を手放さず、中核に据え続けるのには明確な合理的理由と政治的背景が存在します。
第一の理由は、永田町における過酷な情報管理と防諜上の必然性です。高市氏は安全保障や経済安全保障をライフワークとして掲げ、党内でも歯に衣着せぬタカ派の言動で知られてきました。それだけに、政敵からの激しい攻撃や週刊誌へのリーク、事務所内部からの情報流出に対して人一倍強い警戒感を抱いてきた歴史があります。過去の自著や雑誌の単独インタビューでも、信じていたスタッフに裏切られた苦い経験や、政治の世界の冷酷さについて触れられており、「骨肉の情で結ばれた血縁者以外、真の機密を共有できない」という防衛本能が身内起用の根底にあります。
第二の理由は、政策活動に没頭するためのロジスティクス全般の完全委ねです。高市氏は政策立案や勉強会に膨大な時間を費やすタイプとして有名であり、地元・奈良の有権者対策や冠婚葬祭の代理出席、事務所の金庫番としての管理業務を一手に引き受けてくれる存在が不可欠でした。気兼ねなく24時間体制で注文を出せる肉親の存在は、政策通としての活動を物理的に可能にする防波堤の役割を果たしてきたと言えます。
一方で、事務所関係者や出入り業者の間での評判は二分しています。地元有権者からは「知嗣さんは腰が低く、姉と違って威圧感がなく親しみやすい」と評価される声がある反面、元スタッフなどの証言からは「トップの姉弟で方針が完全に密室決定されるため、外部から入った秘書やスタッフが意見を挟む余地がない」「独特の緊張感が漂っており、人の出入りが激しい時期があった」といった、閉鎖的なカルテル体制に対する不満も漏れ聞こえています。