森保監督を語る上で欠かせない象徴的なアイテムが、テクニカルエリアで常に左手に携えている小型のキャンパスノートです。中継カメラが彼のペンを走らせる姿を頻繁に抜くことから、ネット上では一時「デスノート」「メモ魔」などと半ば揶揄を込めて呼ばれることもありました。
日本サッカー協会のメディアブリーフィングや関係者の取材証言によると、あのノートに記されている内容は極めて実務的です。ピッチ上で発生している以下の要素が分単位で時系列に記録されています。
- 相手守備ブロックのズレとスペースの発生位置
- セットプレー時のマークの受け渡しミスや相手のポジショニング
- ハーフタイム(約15分間)で選手に伝えるべき優先順位上位3つの修正点
- 試合時間ごとの交代カード投入プランと、選手へ直接渡す指示事項の整理
ハーフタイムという限られた時間で、感情論ではなく論理的かつ簡潔に選手へ戦術修正を指示するための「思考整理ツール」が、あのノートの正体です。カタールW杯のドイツ戦やスペイン戦において、後半開始直後からのフォーメーション変更(4バックから3バックへの移行)と積極的な交代カード投入がことごとく的中した背景には、前半45分間にメモ帳へ蓄積された冷静な戦況分析がありました。
かつてネット上で根強かった「戦術がない」「交代が遅い」といった批判は、FIFAが導入した交代枠5人制への適応とともに劇的に変化しました。現在の日本代表は、先発組で相手のスタミナと戦術構造を削り、後半に「ゲームチェンジャー」を一気に投入して仕留める戦い方を確立。サポーターの間でも「ポイチの後半勝負」「計算されたメモの力」として、戦術的評価は確固たるものとなっています。