HJ文庫やその単行本レーベルであるHJノベルスに関して「炎上」と呼称される事態は、単一の出来事ではなく、時期と要因が異なる複数のトラブルが重なって認識されたものです。騒動の核心を理解するためには、まず決定的な発端となった2大事件を明確に区別して整理する必要があります。
最も社会的な波紋を広げた事案が、HJノベルスより刊行されていた『二度目の人生を異世界で』を巡る騒動です。2018年、同作のテレビアニメ化が発表された直後、原作者が過去にTwitter(現X)上で特定国や人物に対するヘイトスピーチ・差別的な投稿を繰り返していた事実が発掘されました。主要キャスト陣が一斉に降板を表明する事態へと発展し、アニメ化企画は白紙撤回。版元であるホビージャパンは「極めて不適切な表現であった」として公式謝罪文を発表し、同シリーズの出荷停止および事実上の出版中止措置を断行しました。
もう一つの大きな火種となったのが、2021年7月に発生したホビージャパン編集者による転売擁護ツイート事件です。模型雑誌『月刊ホビージャパン』の編集者が、転売行為を肯定・助長するかのような私見をSNSに投稿したことで、ホビーファンのみならず一般ユーザーの間でも猛烈な批判が巻き起こりました。ホビージャパン社は即座に公式声明を出し、当該編集者を退職処分(けん責・解雇等を含む厳重処分)とし、管理職の降格処分を含む社内規定の厳罰化を発表しました。
この2つの騒動が「ホビージャパンのコンプライアンス危機」として記憶に焼き付いた結果、HJ文庫における日常的な作品の刊行終了や作家とのやり取りまでもが「またHJ文庫が炎上したのではないか」と疑われる下地が形成されたのです。