重音テトのルーツを語る上で欠かせないのが、2008年4月1日のエイプリルフールです。当時、発売からわずか半年余りで社会現象となっていた初音ミク(クリプトン・フューチャー・メディア)の熱狂の裏で、匿名掲示板「2ちゃんねる(現5ちゃんねる)」のニュース速報(VIP)板の住人たちがひとつの悪巧みを企てました。「架空のボーカロイド最新作をでっち上げ、ネットユーザーを釣って驚かせよう」という釣り企画です。
有志の手によって瞬く間に設定画が描き上げられ、声優ならぬ一般投稿者・小山乃舞世(こやまのぶよ)氏の声を加工した「サンプリング音声」が用意されました。こうして生まれたのが「キャラクター・ボーカル・シリーズ第3弾」を騙るフェイクキャラクター、重音テトでした。
企画を支えた有志は後に公式管理サークル「ツインドリル」を結成し、キャラクターの著作権や利用規約を整備していきます。ここで定められた公式設定は、悪ふざけ精神に満ちた極めてユニークなものでした。
年齢は「31歳(キメラ年齢。人間換算で15.5歳)」、特徴的な頭髪は「ドリル」、好物は「フランスパン」、決め台詞は「君は実に馬鹿だな」。すべてが初音ミクへの強烈なカウンターであり、パロディでした。嘘から出た悪ふざけは、エイプリルフールが終われば消え去る運命にあったはずです。しかし、ネットのクリエイターたちは彼女をそのまま死なせはしませんでした。