弥生社会において、髪型は性別だけでなく「身分の高低」を瞬時に見分けるための社会標識でした。ここでは男女それぞれの構造と、階級による明確な格差を深掘りします。
弥生時代における男性の髪型と「美豆良」の構造
弥生時代の男性の髪型を代表するのが、髪を中央で左右に分け、両耳の横で束ねて垂らす「美豆良(みずら)」です。農作業や戦闘時に長い髪が視界を遮らないよう工夫された実用的な髪型でありながら、首長層にとっては権威の象徴でもありました。
当時の美豆良の結い方は、後世の古墳時代埴輪に見られるような複雑な多段巻きではなく、極めてシンプルでした。頭頂部から左右均等に髪を分け、耳の高さで植物の蔓(つる)や麻糸を用いてしっかり結束し、余った毛先を輪のように折り返して留める手法が主流でした。特に戦闘に従事する戦士層は、激しい運動でも解けない強固な結束を行っていたことが分かっています。
弥生時代における女性の髪型と階級格差
一方、弥生時代の女性の髪型は、身分や婚姻状況によって大きく二分されていました。一般的な農民層の女性は、作業効率を重視して髪を後ろでひとまとめに束ねる「屈紒(くつけい)」や、肩口で切りそろえた素朴なスタイルが中心でした。
対照的に、祭祀を司る巫女や支配層の女性は、髪を頭頂部で高く巻き上げる結髪を施し、漆塗りの櫛を何本も挿して威厳を示していました。弥生時代の身分による髪型格差は歴然としており、頭髪を美しく結い上げるための「油(動植物性油脂)」や「装飾品」を所有できるかどうかが、支配階級と庶民を分かつ絶対的な境界線だったのです。