日本中の注目を集めることとなった発端は、2022年4月8日に遡ります。住民税非課税世帯を対象とした国の特別給付金(1世帯あたり10万円)の支給業務において、阿武町役場の4630万円給付金をめぐる致命的な事務ミスが発生しました。本来であれば対象となる463世帯へ分散して振り込まれるべき総額が、振込依頼書の先頭に記載されていた男性住民の口座へ一括で送金されてしまったのです。
この前代未聞の阿武町役場における誤送金の経緯には、紙の帳票とフロッピーディスクという旧態依然とした手続きプロセス、そしてダブルチェック体制の形骸化という行政側の構造的脆弱性が絡み合っていました。送金完了の直後に誤りに気付いた役場職員が男性宅を訪問し、返還を懇願したものの、男性は「すでに口座のお金を動かした」「罪は償う」と述べ、頑なに返還を拒否しました。
事態が公表されるや否や、阿武町役場に対するネットの反応は急速に過熱しました。SNSやネット掲示板では「町の確認不足が招いた大失態」という行政への厳しい批判と、「他人の金と知りながら使い込むのは明らかな不法行為」という受給者への非難が入り乱れ、役場の電話窓口には連日、数千件規模の抗議や嫌がらせ電話が殺到することとなりました。