神田沙也加が真のブレイクを果たしたのは、母の名前を完全に脱ぎ捨て、舞台女優としての研鑽を積んだ結果でした。その決定的な転機となったのが、2006年の宮本亜門演出によるミュージカル『INTO THE WOODS』のオーディションです。彼女は親のコネクションを一切排除し、本名で真っ向勝負を挑み、赤ずきん役を射止めました。
稽古場で徹底的に基礎を叩き込まれた彼女は、クラシックな発声法からセリフの明瞭なデリバリーまで、母とは異なるベクトルの技術を貪欲に吸収していきます。『レ・ミゼラブル』のコゼット役や『ピーターパン』のウェンディ役など、日本を代表する大作ミュージカルで着実に評価を積み重ねていきました。関係者が「音程の正確さと言葉の意味を届ける力は若手女優の中で群を抜いていた」と絶賛したように、その歌唱力は天性のものであると同時に、血の滲むような努力の結晶でした。
そして2014年、ディズニーのアニメーション映画『アナと雪の女王』の日本語吹替版で王女アナ役に抜擢されます。完璧なピッチ、躍動感あふれる声の演技、そして劇中歌「生まれてはじめて」で見せた圧巻の表現力は社会現象を巻き起こしました。この瞬間、世間は彼女を「松田聖子の娘」ではなく、「稀代の表現者・神田沙也加」として完全に認識したのです。