看板である極上コースの幕開けは、息をのむほど美しい前菜から始まる。厳選されたA5ランク黒毛和牛の生肉仕立ては、口に含んだ瞬間に体温でほどけ、濃厚な旨味だけを舌上に残す。単に肉を炙ってタレで食すスタイルとは根本から異なり、和食の繊細な技法を融合させた肉割烹のアプローチが随所に光る。
ハイライトは、特注の厚切りヒレと極上サーロインの食べ比べだ。総料理長が客席の目の前で焼き上げる肉塊は、表面が香ばしくキャラメリゼされ、中は艶やかなロゼ色。噛み締めるたびに溢れ出すジュースは雑味が一切なく、牛への敬意すら感じさせる澄んだ味わいを持つ。
常連客の間で密かに語り継がれているのが、メニュー表には一切記載されていない「裏メニュー」の存在だ。仕入れ状況が完璧に整った夜にしか提供されない希少部位の藁焼きや、牛テールを丸二日間煮込んで抽出した特製出汁の締めご飯など、一見客では決して辿り着けない逸品が隠されている。これらは総料理長との信頼関係や、特定のリピート条件を満たしたゲストだけにそっと案内される至高のサプライズだ。