どれほど事前にアプリや時刻表で下調べをしても、実際の現場では思い通りの日の出に出会えないケースが後を絶ちません。SNS上の写真コミュニティや早朝の山岳地帯に通い詰めるプロ・ハイアマチュアたちの証言を検証すると、初心者が必ず陥る「3つの盲点」が浮かび上がってきます。
現場取材で見えてきた第1の盲点は、「東側の地形障害物によるタイムラグ」です。ネットで検索できる今日の日の出時間は、周囲に何一つ障害物がない「真の地平線(水平線)」を前提に計算されています。しかし、日本は国土の約7割が山林であり、都市部には無数の超高層ビルがそびえ立っています。山梨県の甲府盆地や長野県の松本盆地などの内陸部では、東側に連なる山々の上に太陽が顔を出すまでに、公式の日の出時刻から15分〜25分以上の遅延が生じるのが日常茶飯事です。「時刻になったのに太陽が出ない」と焦る原因の多くは、この地形の隠蔽効果にあります。
第2の盲点は、季節による日の出方角の圧倒的な移動です。小学校の理科で「太陽は東から昇る」と教わりますが、正東(方位角90度)から太陽が昇るのは春分・秋分の日の2日しかありません。夏至の時期の日の出は東北東(約60度)まで北へ大きく偏り、冬至の時期は東南東(約118度)まで南へ傾きます。その角度の幅は実に約60度近くに達します。海岸線で撮影しようと構えていたところ、岬の岩陰に太陽が隠れて見えなかったという失敗は、夏と冬の方角シフトを軽視した結果です。
第3の盲点は、「日の出アプリ」のGPS測位とオフライン空間での差異です。近年は日の出日の入りマップなどのスマートフォン地図アプリで正確な方角を確認する手法が普及していますが、山間部の稜線や電波圏外のアウトドアフィールドでは電子コンパスが金属装備や地磁気の乱れで狂い、数度〜十数方位のズレを起こす現象が多発しています。現場のベテラン写真家は次のように証言します。
「スマートフォンの画面ばかり注視して現地に行くと、方角の錯覚を突かれてシャッターチャンスを逃す。前日のうちに地形図で稜線の向きを把握し、日の出20分前に地平付近が白んできた場所を肉眼で確かめるアナログな現場感覚こそが、結局は一番失敗しない」(都内在住・山岳写真歴22年の男性通信社契約カメラマン談)