横浜美術館が2021年3月から長期休館に入った背景には、開館から30年以上が経過したことによる設備の著しい老朽化がありました。美術品を最適な温湿度で保護するための空調システムや電気基幹設備の全面更新、省エネ性能の向上、さらには激甚化する自然災害への耐震・防災対策が不可避の課題となっていたのです。
工事期間中には、2024年3月〜6月にかけて開催された「第8回ヨコハマトリエンナーレ」のメイン会場として建物の一部が先行公開され、大きな話題を呼びました。そして内外装の仕上げや外構整備を完全に終え、本格的なグランドリニューアルオープンを迎えたことで、館内機能は飛躍的な進化を遂げています。
実際に現地のエントランスを抜けると、丹下健三建築の象徴である大理石造りの大空間「グランドギャラリー」の荘厳さはそのままに、自然光とLED照明が見事に調和した明るい空間が広がります。改修の大きな眼目は「開かれた美術館」への転換です。これまでチケット購入者しか入れなかった動線が見直され、誰でも気軽に立ち寄れるフリースペースや市民ラウンジ、拡充された美術情報センターが配置されました。アート鑑賞を目的としない日常の散策者をも自然に迎え入れる設計へと生まれ変わった点が、今回のリニューアルにおける最大の構造変化といえます。