遊園地の絶叫マシンにおいて、走行中に乗客が身体ごと投げ出される事態は工学的に「絶対に起きてはならない設計ミスまたは運用ミス」とされます。警視庁による現場検証および国土交通省の事故調査委員会による分析の結果、機械自体の致命的な破損ではなく、運用現場における人為的過失の連鎖が引き金であったことが明らかになりました。
舞姫の安全装置は、頭の上から降ろすハーネス型ではなく、太ももから下腹部を押さえる「U字型ラップバー(安全バー)」でした。バーはラチェット(歯車)式で、手前へ引くことで段階的に固定される構造です。調査によって浮き彫りになった主な事故要因は以下の3点です。
第一に、乗客の体格とバーの噛み合い不十分でした。被害男性は体重約130〜140キログラムと大柄な体格であり、着席時に腹部が干渉したことで、安全バーが完全に固定される歯車の位置まで引き込まれていませんでした。実験の結果、ラチェットの噛み合いが浅い状態のまま強い外力が加わると、バーが容易に跳ね上がってしまう危険性があったことが判明しています。
第二に、スタッフによる「ロック確認」の完全な形骸化です。本来の運行マニュアルでは、係員が安全バーを実際に両手で「押す・引く」してロックが正常にかかっているかを物理的に確認することが義務付けられていました。しかし、事故当時に発車を担当していたアルバイトスタッフは、男性のバーに対して目視で手を触れる程度にとどめ、物理的な押し引き確認を怠ったまま発車ボタンを押していました。
第三に、組織的な教育訓練の破綻です。運営会社の東京ドームは、体格基準(体重制限)の明確な規定を設けておらず、スタッフに対して「バーが奥まで入らない乗客への対処手順」を具体的に訓練していませんでした。現場ではスピード運行が優先され、1運行あたり数秒の確認省略が常態化していた実態が浮き彫りとなったのです。