南アルプスの稜線が深い影を落とす大井川水系の最深部。畑薙第一ダム 現在の状況を検証すると、この半世紀以上前に竣工した堤体がいかに高い水準で維持管理されているかが浮き彫りになります。中部電力の設備管理データおよび河川管理記録によると、本ダムは1962年の竣工から60年以上が経過した現在も、下流の畑薙第二ダムとの間で最大出力13万7000kWを叩き出す混合揚水式発電の「上池」として極めて重要な役割を担っています。
総貯水容量約1億740万立方メートルを誇る広大な人造湖「畑薙湖」は、近年の激甚化する気象条件下においても緻密な水位管理が行われています。現地の管理関係者の証言によると、「出水期前の計画的な水位低下運用と、センサーを用いた24時間の堤体変位監視が徹底されており、構造上の健全性は極めて強固に保たれている」とのことです。大雨の直後には上流部からの大量の流木や土砂が流入するものの、専門の回収艇による除去作業が迅速に実施されており、発電および放流水質への影響は最小限に抑えられています。
現地を訪れる見学者にとって特に重要なのは、堤体上の一般開放状況です。かつては天端(ダムの最上部通路)を自由に歩行可能な期間もありましたが、近年の防犯・安全管理基準の厳格化に伴い、堤体の一部エリアや発電設備周辺への立ち入りは厳密に制限されています。現在はダム直下の展望ポイントや湖畔沿いの林道から、その圧倒的な造形美を仰ぎ見るのが基本的な探訪スタイルとなっています。