体育館の壁は、高さや部位によって全く異なる材質と構造で張り分けられている。人の体が直接触れる高さと、ボールしか当たらない高所では求められる物理特性が根本的に異なるためだ。
床面から床上1.2〜1.5メートル前後のいわゆる「腰壁」エリアには、従来から天然木無垢材(スギ、ヒノキ、ナラなど)や高強度の積層合板が多用されてきた。児童生徒が寄りかかったり、運動器具がぶつかったりしても簡単に破損しない堅牢性が最優先されるからだ。一方で腰壁より高いエリアには、前述の有孔ボードや不燃認定を受けた無機質系ボードが配置され、空間全体の調音を担っている。
近年、この内装構造に大きな変化が起きている。急速に導入が進んでいるのが、ウレタンフォームなどを内蔵した「クッション壁(衝撃吸収壁)」の施工だ。バスケットボールのゴール裏やフットサルのゴール背後など、競技者が猛スピードで突っ込む危険性が高いエリアに対し、従来の硬質木材に代わって初めから厚さ30〜50ミリのクッションパネルを壁面全体に埋め込む事例が急増している。
加えて、2026年現在の新築・改修現場では地域産木材を活用した木質化と不燃性能の両立が強く意識されている。脱炭素社会の推進に伴い、内装制限をクリアした難燃処理木材による有孔ルーバー壁や、温かみのあるテクスチャーを持ちながら耐火性・耐水性に優れた特殊けい酸カルシウム板の採用が標準化しつつある。