成人の人体骨格を構成する骨の標準的な数は206個と定義されています。解剖学の教科書や医療現場でこの数値が基準とされる一方、新生児の身体にはおよそ300〜350個の骨片が存在します。なぜ成長するにつれて約100個もの骨が減ってしまうのか、その主因は「軟骨が硬骨化する経緯」と「骨同士の癒合(ゆごう)」にあります。
骨の形成プロセスには、軟骨が骨へと置き換わっていく「軟骨内骨化」と、結合組織の膜から直接骨が作られる「膜内骨化」の2種類が存在します。赤ちゃんの骨格の多くは、柔らかく弾力性に富んだ軟骨で構成されており、レントゲン写真で見ると骨と骨のあいだが大きく離れているように見えます。これは「骨化中心」と呼ばれる石灰化の核が複数に分かれて存在しているためです。成長ホルモンや負荷の影響を受けながら、これら複数の小さな骨が徐々に硬い骨(硬骨)へと成熟し、隣接する骨同士が完全にくっついてひとつの強固な骨へと統合されます。
仮に人間が最初から大人と同じ206個の硬い骨を持って生まれてきた場合、生命の維持そのものが破綻します。わずか十数センチメートルの狭い産道を頭部から安全に通り抜けるためには、骨格が柔軟に変形できる構造でなければなりません。さらに、生後の爆発的な身長・体重の増加に適応するためにも、分割された軟骨構造が不可欠なのです。骨が減るという現象は、生命が胎外環境へ適応し、自立歩行を達成するために不可欠な合目的的システムといえます。