新生児が寝ている最中に突如としてうなり声を上げ、顔を真っ赤にして激しくいきむ現象の背後には、生まれたばかりの赤ちゃん特有の発達段階が深く関係しています。親から見れば「苦痛に悶えている」ように見えますが、生後数週間の赤ちゃんにとっては、生命活動を適応させるための懸命な練習プロセスに過ぎません。その主な生理的理由は大きく分けて3つ存在します。
第1の決定的な要因は、国際的な消化器病診断基準(Rome IV)でも定義されている乳児排便困難症(Infant Dyschezia / 乳児ディスケジア)です。大人は排便や排ガスを行う際、無意識に横隔膜と腹筋を使って腹圧を上げつつ、肛門括約筋をリラックスさせて緩めるという高度な協調運動を行っています。ところが新生児は、この「お腹に力を入れながらお尻の筋肉を緩める」という相反する身体操作の連携が極めて未熟です。その結果、出口を閉じたままお腹だけに全力で力を込めてしまうため、顔を真っ赤にして「ウーッ」と声を漏らしながらいきむ状態に陥ります。数分から十数分いきんで偶然筋肉が緩んだ瞬間に排便や放屁があると、途端に何事もなかったかのように眠りへ戻るのはこのためです。
第2の要因は、消化器官の未発達と腸内のガス溜まり・ゲップ不足です。新生児の胃は大人と異なり直線的な「とっくり型」をしており、胃の入り口(噴門部)の筋肉も緩いため、授乳時に母乳やミルクと一緒に空気を大量に飲み込んでしまいます。授乳後のゲップが十分に出切らなかった場合、その空気は胃から腸へと移行し、腸壁を押し広げて膨満感をもたらします。寝ている赤ちゃんはこの不快な圧迫感を解消しようとして、反射的に寝ながらいきみ、うなり声を上げて腸管を動かそうとするのです。
第3の要因は、新生児特有の睡眠構造(浅い眠り=動的睡眠の多さ)にあります。成人の場合、睡眠時間の約80%を深いノンレム睡眠が占めますが、新生児の睡眠は約50%がレム睡眠(浅い眠り)で構成されています。レム睡眠中、赤ちゃんの脳は活発に活動しており、呼吸リズムが不規則になったり、眼球が動いたり、手足をピクつかせたりします。この浅い睡眠状態で、大人の「寝言」や「寝返り」のような感覚で無意識にうなり声を上げているケースが珍しくありません。自力で体位を変えられない赤ちゃんが、体の位置を微調整しようと力んでいる動作が、外見上「苦しそうな唸り」として映ってしまうのです。