ネット上の掲示板やSNS、当事者のブログや手記を丹念に追っていくと、診断を巡る理想と現実の激しい乖離が浮き彫りになります。発達障害専門外来の評判と口コミを調査した現場データからは、診察室で多くの受診者が直面する3つの壁が見えてきます。
第1の壁は「5分診療による消化不良」です。数ヶ月待ってようやく訪れた初診で、医師から「日常生活で困っていることは?」と聞かれ、緊張から頭が真っ白になってうまく説明できず、わずか数分で一般的な睡眠薬や抗不安薬だけを処方されて終わってしまったという嘆きが散見されます。問診を成功させるには、過去の具体的な失敗事例(「いつ・どこで・何をして・どんな不利益が生じたか」)を箇条書きにしたメモを持参することが強く推奨されます。
第2の壁は「グレーゾーンという曖昧な結論」です。知能検査や問診の結果、特性は見受けられるものの「DSM-5の厳密な診断基準には一歩届かない」と判定されるケースが少なくありません。この際、「自分はADHDではなかったのか、それならこの苦しみは何なのか」とアイデンティティの空白に陥る相談者が続出しています。医学的な確定診断がつかないグレーゾーンであっても、困りごと自体は現実であるため、診断名の有無に関わらず認知行動療法的アプローチや環境調整を進める柔軟性が求められます。
第3の壁は「代償行動(マスキング)による見落とし」です。知的能力が高い人や、過剰に適応しようと努力を重ねてきた人ほど、「チェックリスト上は問題なし」と見なされがちです。「人一倍のメモ取りや徹底的な前日準備でなんとか業務をこなしているが、家では燃え尽きて一歩も動けない」という苦悩は、表層的な行動観察だけでは医師に伝わりにくいという難しさがあります。