今回、当メディアの取材に応じた三代目店主によって、これまで決して明かされることのなかった「秘伝出汁」の工程が一部公開された。蕎麦の味わいを左右する最大の鍵は、つゆのベースとなる「かえし」と「一番出汁」の合わせ方にある。
出汁に使用されるのは、鹿児島県枕崎産の厳選された本枯節と、北海道産の真昆布。これらを贅沢に使い、沸騰直前の絶妙な温度帯でじっくりと旨味を抽出する。火加減を一秒でも誤れば雑味が出るため、寸胴の前から片時も離れることはできない。熟練の蕎麦職人は「言葉で教えられるものではなく、音と泡の立ち方で状態を見極める」と語る。
さらに特筆すべきは、醤油とみりん、砂糖を仕込んでから地下の専用保管庫で丸一ヶ月以上寝かせる特製のかえしだ。角が取れてまろやかになったかえしと、取りたての濃厚な出汁が合わさることで、深みのある濃醇な旨味が完成する。一口含めば、鰹の風味が口いっぱいに広がり、後味には上品な甘みが残る。