種から植物を育てる行為には、古くから人類を魅了してきた歴史的背景がある。かつてルーサー・バーバンク(植物育種家)は、実生(みしょう)の多様性の中に新品種の可能性を見出し、数々の果樹を生み出した。
農林水産省の登録品種データを見ても明らかなように、接ぎ木で増やされる市販の桃に対し、種から育てる実生株は親とは異なる個性を持つ。どんな味の果実がなるか、あるいは美しい花を咲かせるかは未知数だ。映画『奇跡のリンゴ』(果樹自然栽培プロジェクト)で描かれたような、自然の生命力と対話する深い感動が、わずか一粒の桃の種から始まるのである。