志村さんが生み出したキャラクターの中で、最も息が長く、広く愛されたのが「バカ殿様」と「変なおじさん」だろう。バカ殿様は権力者でありながら徹底的に愚行を繰り返し、家臣や侍女たちと同じ目線で戯れる。一方、変なおじさんは社会のルールを軽々と踏み越える異分子でありながら、最後は独自のダンスで場を和ませて去っていく。
文化人類学的な視点からも、彼が演じたキャラクター群は「社会の圧迫感から人々を解放するアジール(避難所)」としての役割を果たしていたと指摘される。誰かを傷つけたり、見下したりすることで得る嘲笑ではなく、自らが徹底的に「バカ」になり、滑稽な存在として晒されることで観客に安心感と快楽を与える。この優しさに満ちた狂気こそ、現代の分断された社会において人々が切望する癒やしの正体なのかもしれない。