日本国内には、彫刻史の奇跡と称される如意輪観音の名像が各地に点在しています。特に平安時代初期の密教美術を代表する像は、普段は厨子の奥深くに安置され、年に数日あるいは数十年に一度しか開帳されない秘仏として厳重に守られています。
日本三如意輪と称される至宝の美学
大阪・河内長野の観心寺 如意輪観音は、密教の現世肯定的な生命感を極限まで高めた造形として世界的な評価を受けています。榧の一木から彫り出された量感あふれる体躯、唇に残る紅の鮮やかさは、千年の時を超えて生身の体温すら感じさせます。年にわずか2日間のみ開かれる金堂の扉の前には、全国から熱心な拝観者が列をなします。
甲山の山懐に抱かれた神呪寺(かんのうじ)の本尊は、通称「甲山(かぶとやま)大師」とも呼ばれ、女性的な優美さと凛とした気品をたたえています。一方、近江の古刹・石山寺 本尊 如意輪観音は、通常6本の腕を持つ形式とは異なり、2本腕(二臂)で岩盤上に座す特異な古様を伝えており、歴代天皇の封印(勅封)によって厳重に守護されてきました。