太一への想いは、最初は単なる「格好いい先輩への憧れ」に過ぎなかった。だが、彼の孤高の苦悩や千早への切ない片想い、そして誰よりも努力を重ねる姿を間近で見るにつれ、菫の恋心は本物へと深まっていく。
結果として、彼女の恋が実ることはなかった。太一の視線の先には常に千早がいたからだ。しかし、この失恋こそが彼女を大きく変える転機となる。振られた悲しみを言い訳にせず、太一が愛した競技かるたの世界に本気で向き合うことを決意。他人のために恋をするのではなく、己の足で立ち、自分のために札を払う覚悟を決めた瞬間だった。
初心者だった菫が、相手の配置を覚え、指先をすらせ、泥臭く一勝を取りにいく姿は、まさに成長のドラマそのもの。恋の終わりは、彼女にとって「一人のアスリート」としての覚醒の始まりだったのだ。