スナップ写真(Snap photography / Snapshot)とは、被写体にポーズや構図を意識させず、日常の光景や偶然の出来事を即興的に切り取る撮影スタイルを指します。スタジオで照明を組み、被写体にポージングを指示して作り上げる「ポートレート」や、行事の記録として全員がカメラ目線で並ぶ「記念写真」とは、撮影の目的もアプローチも対極に位置します。
この言葉の語源は、19世紀中頃の狩猟用語「スナップショット(早撃ち)」です。獲物を狙いすまして素早く撃つ動作になぞらえ、カメラを素早く構えてシャッターを切る行為をスナップショットと呼ぶようになりました。1920年代に小型カメラの金字塔であるライカ(Leica)が登場したことで、重厚な三脚から解放された写真家たちが街へ飛び出し、ひとつの表現ジャンルとして確立された歴史を持ちます。
20世紀を代表する写真家アンリ・カルティエ=ブレッソンは、著書やインタビューで「決定的瞬間(The Decisive Moment)」という哲学を提唱しました。形と光、そして人間の感情が一瞬だけ完璧な調和を見せる刹那を捉える姿勢は、木村伊兵衛や森山大道といった日本の巨匠たちにも受け継がれ、荒々しいストリートの質感や人情味あふれる瞬間を捉えた数多くの傑作を生み出しています。