ネット上のコミュニティやSNSで今なお根強く囁かれているのが、「月の裏側が見えない理由」を「月の裏側は太陽光が一切届かない漆黒の暗黒面(Dark Side of the Moon)だから」とする誤解です。これは科学的に明確な誤りです。
月は地球に対して常に同じ面を向けていますが、太陽に対しては29.5日の周期で全面が順番に照らされています。例えば地球から見て「新月」のとき、地球から見える表側は真っ暗ですが、月の裏側には太陽光が燦々と降り注ぎ「真昼」を迎えています。裏側が見えないのは単に「地球に向けられていない」からであり、光が当たらないからではありません。
さらに見落とされがちな事実として、「地球からは月の表面の50%ちょうどしか見えない」というのも誤りです。実際には以下の天体現象により、地球からは月の全表面の約59%を観測することができます。
- 光行差と楕円軌道(経度秤動):月の公転軌道は完全な円ではなく楕円形のため、地球に近い近地点では公転が速くなり、遠地点では遅くなります。一定速度で回る自転との間にズレが生じ、月が左右に首を振るように見えます。
- 自転軸の傾き(緯度秤動):月の自転軸は公転面に対して約1.543度、黄道面に対して約6.688度傾いているため、北極や南極周辺の縁が上下に覗き込める期間が存在します。
- 日周秤動:地球自身の自転により、観測者の視点が地球の半径分(約6,400km)移動するため、朝と夕方で月の見える角度がわずかに変化します。