「対向車を避けて照らしているはずなのに、なぜパッシングされるのか」――多くのドライバーが直面するこの疑問の裏には、車載カメラの検知性能と道路環境の複雑な相互作用が存在します。アダプティブドライビングビームの仕組みは、フロントガラス上部に設置された単眼・ステレオカメラが前方車両のテールランプやすれ違い車のヘッドライト光源を検知し、その照射エリアだけをミリ秒単位で「部分遮光(マスキング)」する設計です。
ところが、対向車からすればアダプティブドライビングビームが眩しい理由は明快です。もっとも頻発するのは「カーブの立ち上がり」や「アップダウンのある起伏路(坂の頂上付近)」でのタイムラグです。対向車がブラインドコーナーから鼻先を出した瞬間、カメラが光源を認識してLEDを消灯するまでに、コンマ数秒のラグが生じます。対向車のドライバーにとっては、暗闇から突如としてハイビームの直撃を受ける形となり、生理的な防衛反応として咄嗟にパッシングを行ってしまうのです。
さらに、雨天時やウェット路面における光の乱反射も見逃せません。どれほど正確に車両本体をマスキングしていても、路面のアスファルトに反射したハイビームの高輝度な光が下から対向車のフロントガラスを直撃します。これに加え、昨今のSUVブームに伴うヘッドライト搭載位置の高重心化が、車高の低いセダンや軽自動車のドライバーに対して強烈なグレア(眩惑光)を与える構図を作り出しています。対向車側は悪意を向けられたと感じ、照射している側は自動制御を信じ切っているため、互いの認識に決定的な断絶が生まれています。