これらの多足類が目撃される時期には、明確な季節的パターンが存在します。ムカデの発生時期は、気温が上昇し活発化する5月〜6月の「繁殖・産卵期」と、卵から孵化した幼虫が成長して活発に餌を求める9月〜10月の「秋の索餌期」の年2回ピークを迎えます。ムカデは寒さに弱いため冬場は冬眠に入りますが、初夏と初秋の湿度の高い夜間に、開口部や隙間から獲物を追って家屋内に侵入してきます。
一方で、ヤスデの大量発生の原因は、気象条件と密接に関係しています。ヤスデの活動期は5月中旬〜7月上旬の梅雨時に集中します。ヤスデは乾燥に極端に弱く、普段は庭の落ち葉の下や腐葉土、プランターの底などの適度な湿り気がある場所で集団生活を送っています。
しかし、梅雨時期の長雨やゲリラ豪雨によって地中の土壌が過飽和状態(水浸し)になると、ヤスデは「溺死を防ぐための集団避難」として一斉に地表へ這い出し、コンクリートブロックの擁壁や家屋の基礎、外壁をよじ登り始めます。この生態行動こそが、数千〜数万匹規模に達するヤスデの大移動と「壁一面を覆い尽くす大量発生」の正体です。近年増えている都市部の線状降水帯や集中豪雨の直後は、まさにヤスデが建物の隙間を狙って押し寄せる危険水域となります。