現代の『日本レコード大賞』における最大の視聴体験は、テレビ画面の前だけで完結しません。X(旧Twitter)を中心とするSNS上では、生放送開始と同時に「#レコ大」「#日本レコード大賞」が世界トレンド1位を独走し、リアルタイムでのファンダム同士の熱い議論が巻き起こります。
視聴者やファンの生の声・反応を分析すると、大きく3つの傾向に二極化していることが分かります。
第一に、「推しグループの栄誉を称える純粋な応援熱狂」です。特に最優秀新人賞レースや大賞発表の瞬間、アーティストが感極まって涙を流しながら生歌を披露する姿は、ファンダムにとって1年間の応援が結実した最高の瞬間として熱狂的に共有されます。生演奏のオーケストラをバックにした圧倒的なパフォーマンス力は、口パクやリップシンクが疑われる昨今の歌番組に対する強烈なアンチテーゼとして絶賛される傾向にあります。
第二に、「受賞結果に対する選考基準への疑問と議論」です。「なぜ年間ストリーミング1位のあの曲が大賞ではなく優秀作品賞止まりなのか」「なぜ大ヒットした海外・K-POP勢が大賞を獲れない規程なのか(※大賞は日本国内で活動するアーティスト・邦楽主体の選考慣例があるため)」といった、グローバル化・多様化に伴う違和感の声も毎年絶えません。
そして第三に、「年末の風情を味わうライト層の定点観測」です。「普段はストリーミングで自分の好きな音楽しか聴かないが、レコ大を見ることで今年世の中で流行っていた曲をまとめて把握できた」という声は非常に多く、アルゴリズムによるフィルターバブル時代だからこそ、受動的にヒット曲の全体像を俯瞰できる場としての価値が再評価されています。