言葉で不調を訴えることができない新生児は、ミルクを過剰に摂取した際、全身を使って明確なサインを発信しています。小児医療の臨床現場で指摘される「新生児のミルク飲ませすぎサイン」の代表例が、激しい唸り(うなり)と腹部の緊満です。
新生児の胃の許容量は、生後1日目でわずか5〜7ml(サクランボ大)、生後1週間で約45〜60ml(キウイ大)、生後1ヶ月を迎える頃でも約80〜120ml程度に過ぎません。さらに大人の胃と異なり、胃の形状が寸胴な徳利型(トックリ型)をしており、胃の入り口である噴門部(ふんもんぶ)の筋肉の締まりが非常に緩いという解剖学的特徴を持ちます。許容量を超えたミルクが流れ込むと、横隔膜が圧迫されて呼吸が荒くなり、腹圧が高まることで「新生児がミルクを飲んだあとに唸る・苦しそうにする」現象が引き起こされます。
保護者がもっとも焦燥感を覚えるのが「吐き戻し(溢乳)」です。ここで臨床上極めて重要となるのが、通常の生理的溢乳と、緊急受診を要する病的な嘔吐の見極めです。
- 生理的な溢乳(飲ませすぎ・ゲップ不足):口の端からタラタラとこぼれ出る、抱っこや寝返りの拍子にタラリと戻す。本人の機嫌が良く、体重が順調に増えていれば過度な心配はいりません。
- 噴水状の嘔吐(要注意):飲んだ直後に「噴水のように前方に勢いよくミルクを吐き出す」状態を指します。これが毎回の授乳後に続く場合、生後2〜6週頃に好発する「肥厚性幽門狭窄症(ひこうせいゆうもんきょうさくしょう)」などの消化器疾患が強く疑われます。胃の出口の筋肉が肥大してミルクが十二指腸へ流れなくなる病気であり、速やかな小児科専門医の受診が不可欠です。
また、「新生児のお腹がパンパンに張り、便秘気味になる」という症状も過飲の警告灯です。飲みすぎたミルクが未熟な腸内で異常発酵し、ガスが溜まることで腹部が太鼓のように硬く張ります。排便時に真っ赤な顔をして泣き叫ぶ場合、ミルクの消化負担が赤ちゃんの処理能力の限界を超えているシグナルといえます。