鶴姫伝説を語る上で欠かせない決定的な証拠として知られるのが、大山祇神社の宝物館(紫陽殿・国宝館)に収蔵されている重要文化財「紺糸威胴丸(こんいとおどしどうまる)」です。
大山祇神社は、日本の国宝・重要文化財に指定されている武具甲冑の約4割が集まる「武具の殿堂」として知られますが、その中でもこの胴丸は極めて異彩を放っています。一般的な武士の鎧とは明らかに異なり、胸部が大きく突き出るように丸みを帯びて成形され、ウエスト部分が極端に細く絞られているのです。この特異な形状から、古くより「日本で唯一現存する女性用の鎧」として伝えられてきました。
近代以降の甲冑研究においては、「作風から見て南北朝時代の形式に近いのではないか」「極小柄な男性武将用、あるいは儀礼用ではないか」といった学問的な異論も一部で提起されています。しかし、実際に目の当たりにするその流麗でしなやかなシルエットは、戦場を駆けた女性武将の息遣いを現代に伝える圧倒的な迫力を放っており、今なお参拝者や研究者を惹きつける大きな歴史的ミステリーとなっています。