江ノ島を訪れる上で外せないのが、日本三大弁財天の一つとして名高い江島神社への参拝です。しかし、現地で多くの参拝者が陥るのが「目の前に現れた社殿だけに手を合わせ、順路が曖昧なまま終わってしまう」という事態です。
江島神社は単一の社殿ではなく、島内に点在する「辺津宮(へつみや)」「中津宮(なかつみや)」「奥津宮(おくつみや)」の三社を総称した神社です。正しい参拝の順番は、古来の習わし通り、島の入り口に近い順から「辺津宮(田寸津比売命)」、階段を上がった先にある鮮やかな朱塗りの「中津宮(市寸島比売命)」、そして島の奥深くに鎮座する「奥津宮(多紀理比売命)」へと進むのが本筋です。さらに奥津宮の隣には、江の島発祥の伝承を残す龍神を祀った「龍宮(わだつみのみや)」があり、ここまで詣でて初めて一連の巡礼が完結します。
この三社参拝を快適に行う上で、絶対にケチってはいけない投資が「江ノ島エスカー」の利用です。「たかが数十メートルの階段を登るだけで大人数百円を払うのはもったいない」と徒歩を選ぶ初訪問者がいますが、これは現場を知らない典型的な判断ミスと言わざるを得ません。
江ノ島エスカーは、全長106mの高低差を全4区間・所要時間約4分で一気に結びます。徒歩で急な石段を一段ずつ登った場合、息が上がり、膝に負担がかかるだけでなく、途中で景色を楽しむ余裕すら失われます。江ノ島エスカーに乗るべき理由は、単なる移動時間の短縮ではなく「奥地を散策するための体力を確実に温存すること」にあります。特に気温が上昇する季節や、足元が不安定になりがちな観光地において、序盤の疲労を最小限に抑えることは、その日全体の旅行体験を左右する極めて合理的な判断です。