ファンタジー映画として金字塔を打ち立てた本作だが、イギリスの作家ダイアナ・ウィン・ジョーンズによる原作小説『魔法使いハウルと火の悪魔』を読むと、ジブリ版との決定的な違いに気づかされる。原作のハウルは、どちらかと言えば目立ちたがり屋で自好家、危険からは器用に逃げ回る人風な青年に描かれており、「戦場を飛ぶ巨大な黒い鳥」という描写は宮崎駿監督独自の解釈と演出によって生み出されたものだ。
宮崎監督は原作が持つユーモアを活かしつつも、自身のアニメーション産業における表現の最高峰として「戦争の惨禍と、それに抗う歪んだ存在」を作品の中心に据えた。この大胆な改変により、ハウルの孤立と悲壮感が何倍にも強調され、観客に強烈なインパクトを与えることとなった。