災害報道に長年携わってきた専門家として強調したいのは、人間には危機の直前まで「自分だけは大丈夫だ」と思い込もうとする強い心理作用が働くという事実です。
災害心理学でいう「正常性バイアス」(日常の平穏を保とうとする心の防御機構)や、周囲が逃げていないから大丈夫だと安心する「同調性バイアス」は、避難行動の最大の敵です。「まだ外で傘を差して歩いている人がいる」「過去30年浸水したことがない」という主観的な安心材料を探し始めた瞬間、危機管理は破綻します。自らの命を守るためには、感情に頼らない「心理的バウンダリー(明確な行動基準の境界線)」をあらかじめ設定しておく必要があります。
【避難・行動判断の客観的基準】
・高齢者や乳幼児がいる家庭:自治体から「警戒レベル3(高齢者等避難)」が発令された段階、または暴風域突入の12時間前に、指定避難所や安全な知人宅への移動を完了させること。
・一般世帯・単身者:「警戒レベル4(避難指示)」で全員避難が鉄則。ただし、夜間の豪雨時に浸水が始まっている場合、外へ出る行動自体が命取りになります。その際は建物の2階以上、斜面と反対側の部屋へ退避する「垂直避難」へ即座に切り替えてください。