流線型を完成させるうえで、最も微細かつ劇的な影響を与えるのが頭部のアライメントです。首は重い頭(約5〜6kg)を支える可動関節であるため、角度が数度変わるだけで脊柱全体のカーブが変形します。けのびの頭の位置と目線における絶対的な基本は、「プールの底(真下)をまっすぐ見つめること」です。
具体的には、耳の後ろに上腕の内側を密着させ、両手の手のひらを重ねて親指をロックした状態で、後頭部が腕のラインよりも上へ飛び出さないようにポジショニングします。視線がほんの少しでも進行方向(斜め前)に向くと、後頭部が背中側に落ち込み、胸が張って腰が反り返ります。初心者は「頭を腕で挟み込む」と表現されると窮屈さを感じて顎を引いてしまいがちですが、顎を引きすぎると今度は背中が丸まり、肩甲骨周辺が盛り上がって抵抗を生みます。首の後ろのシワを伸ばし、自然な頸椎のストレートを保つ意識がストリームラインの正しい姿勢の肝です。
さらに見落とされがちなのが、けのび時の息の吐き方と呼吸法のメカニズムです。「肺に空気がたくさん入っていた方が浮く」と考え、胸郭限界まで息を吸い込んで息を止める人が目立ちます。しかし、肺を風船のようにパンパンに膨らませると、浮心が過度に強調されて上半身ばかりが浮き上がり、相対的に下半身の沈降が激しくなります。
正解は「最大吸気量の約70〜80%を取り込み、壁を蹴った直後から鼻からごく微量ずつ息を吐き続ける(ハミングする感覚)」ことです。微細に息を吐き続けることで、胸郭の余計な力みが抜け、水圧に対して身体がしなやかに同調します。同時に、鼻腔から気泡を出し続けることで、水が鼻に入るトラブルを完全に防ぐ副次効果も得られます。